行き詰まり 風吹くばかりの 枇榔樹林――鹿児島県・桜島、佐多岬、本州最南端への旅
神川大滝公園の大滝橋を見上げる 本州最南端 佐多岬


●光溢れる神川大滝に遭遇

 2006年のGWに九州各県を巡った。鹿児島へは5月5日に熊本から九州自動車道を南下し、桜島と佐多岬をめざした。
 鹿児島は過去に二度来たことがあるが、鹿児島市・指宿温泉と薩摩半島側。今回の目的の一つは本州最南端の佐多岬に到達することで、それは大隅半島側にある。
 国分ICからは、海岸沿いの一本道。桜島の東を通過し、鹿屋、根占を経由して南へ向かう。海岸の地形は独特で、凹凸の多い溶岩と、火山灰が堆積した地層が水に浸食された段丘で構成されている。これは過去に訪れたことのある、対岸の鹿児島・指宿間の海岸線とも共通する。現役の活火山・桜島や、古・姶良火山がつくり出した地形であることを実感する。
 途中、標識に惹かれ左折し神川大滝に立ち寄った。落差26M、水量も豊富で、予想よりはるかに立派な滝であった。周囲は大滝公園として整備され、滝を眺める位置に大滝橋(吊橋)が架かっている。駐車場も整備されており、湧き水も飲める。
 
         
大滝橋 小滝 大滝 水量豊富な神川大滝
日南海岸を思わせるロードパーク ジャングルに埋もれるような御崎神社 亜熱帯植物の倒木更新



●北緯31度線を越え 南の果てに立つ

 佐多岬まではさすがに遠い。佐多の集落を過ぎるとほとんど民家もなく、黙々とロードパーク(有料自動車専用道)を走るばかりとなる。周囲は見慣れた松や竹や杉ではなく、ソテツ、アコウ、ガジュマルなど亜熱帯植物が繁茂する。
 自動車道の終点に駐車場があり、そこからは徒歩。なお、ロードパーク往復1000円、徒歩での入園(岬に進むための遊歩道)に100円が必要だった。トンネルを抜け、遊歩道を歩いて岬をめざす。この時ほど毎月山歩きの会に参加しておいてよかったと思えたことはない。歩き慣れていない人には意外にきついコースであろう。
 やがて断崖の上に出る。周囲一帯は一面の枇榔樹の林。西を見ると開聞岳のシルエットが見える。展望台の建物は災害の被害のため現在閉鎖されているが、見晴らしの良い地点から岬の燈台を写真に収める。佐多岬は、本州本土の先端から、わずか海を隔てている小島・大輪島に燈台が建っている。本来は種子島、屋久島も見えるそうだが、春がすみのため島影は確認できなかった。
自生するソテツと遊歩道 佐多岬を遠望 日本最古の佐多岬燈台
岬の海岸はエメラルドグリーン 大隅半島から見る開聞岳 錦江湾を背にするアコウ樹

●桜島の迫力 溶岩道路と埋没鳥居

 佐多岬からの帰路に桜島に入る。その昔、巨大な古・姶良火山が噴火した後、阿蘇山よりも巨大なカルデラができ、そこに海水が入り込んだのが現在の錦江湾である。桜島は、阿蘇山の中岳、摩周湖の神の島にあたる。以前は島だったのが噴出する溶岩で垂水市と陸続きになっている。
 驚くことに、今も溶岩がほぼむき出しの状態で荒涼とした台地となっている。溶岩が取り囲んでいる入江が天然の漁港となり、おびただしい小型の漁船が停泊している。大自然の驚異と、人間の営みの逞しさを感じる。
 道路は、鹿児島からのフェリー乗り場から袴腰を結ぶ南岸がメインで、黒神(島の北東部)側は交通量が少ない。白煙を噴き上げているその山裾に、民家もあり商店もあり人々の生活があるのが不思議な感覚である。
 黒神の民家の横に、有名な埋没鳥居がある。かろうじて頭だけを残して溶岩に埋まった石の鳥居が、噴火の猛威を物語っている。



垂水から見た桜島 海潟から見た桜島 溶岩で出来た天然の港・袴腰
黒神から見た桜島の勇姿 噴火を物語る埋没鳥居 桜島の夕景