このHPは脈絡のない順番に作成していった。たまたまだが、滋賀県が最終のページになった。滋賀は大阪からの日帰り圏内で、訪れる機会も少なくない。山歩きを趣味にするきっかけとなった比良山、標高のわりに急勾配で息が上がった三上山など、日帰りで登る山もいくつかある。が、今回は日本最大の湖の圧倒的な存在感のもと、水にこだわる旅を企図した。
旅の始まりは彦根から。まず夢京橋キャッスルロードを歩く。意図的につくられた古い町並みではあるが、こうした演出は悪い印象ではない。ある種、通りそのものが徹底して町並みを意識すると、「売り物」になり得る。同様のものは伊勢のおかげ横丁や飛騨高山、千葉県佐原市でも見た。
堀にかかる京橋から国宝・彦根城の内部へと歩み入る。もとより彦根山という名の小山に築かれた城のため、天守閣までは坂道を上ることになる。汗をかいた体に、緑陰をすり抜ける風がさわやかだ。
彦根城は徳川家康の命により1603年に着工され、完成までに20年を要した。井伊直弼の居城であり、最近ではキャラクターの「ひこにゃん」が有名になった。天守からは順路に従い黒門へ降り、玄宮園(庭園)を経て、いろは松の横を通って城外へと出た。
メインストリートから一筋入った通りを歩いてみる。キャッスルロードが意識したレトロだとすれば、こちらには自然なレトロ感がある。住宅と並んで木造の食堂や、大型店ではない電気屋さんがある。唐突に地域エフエム局が現れる。城下町の裏道にも静かな魅力があった。
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夢京橋キャッスルロード |
新聞販売店もこの外観 |
彦根城に渡る京橋 |
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彦根城内の道 |
彦根城天守閣に通じる櫓 |
国宝・彦根城天守閣 |
●圧倒的な真水の量、湖に浮かぶ竹生島に上陸 |
竹生島(ちくぶしま)は琵琶湖の北部にぽつんと浮かぶ小島だ。都久夫須麻神社と宝巌寺を擁する信仰の島として訪れる人が多い。彦根、長浜、今津から定期便が発着する。
海浜育ちの私は、防波堤があり船が着岸している光景を見ると直感的に海を連想してしまうので、これが真水であることは違和感のある。海に浮かぶ船には数え切れないほど乗ったことがあるが、淡水に浮かぶ船に乗る機会はほとんどない。記憶では、阿寒湖の遊覧船と瀞峡のジェット船のみだ。
竹生島へは彦根から約40分の船路。小さな島だけに、周囲で満々とたたえられる水の量を改めて実感する。岩を打つ水辺は瀬戸内海の島とまったく変わらないが、塩分が無い分、水際まで植物が育っているのは海と違う点だ。
島からの帰路は別便で長浜に向かう。約30分で湖畔に建つ長浜城の見える港に到着。長浜城の天守閣に登ると、琵琶湖の全貌を見渡すことができた。
長浜は町おこしの成功例と言われている。元銀行の黒壁の建造物を保存し、市街地活性化の中心施設として再生させた。拠点を中心に黒壁スクエアが形成され、旧北国街道の通り全体の歴史的建造物を保存、新築も景観にあった建物にすることによって活気が甦った。 蔵
でつくる醤油屋さん、鴨の肉味噌など、伝統的な食文化が新しい観光客を迎えて再興している。
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彦根より竹生島行きの船 |
都夫須麻神社 |
竹生島に上陸:正面は宝巌寺 |
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竹生島全景 |
湖畔に建つ長浜城 |
長浜城から竹生島方面を見る |
長浜城から長浜市街を望む |
●水郷の近江八幡に近江商人とヴォーリズの足跡 |
水つながりで、水郷で有名な近江八幡に立ち寄った。
広々とした平野の中に市街地があり、さらにその中に歴史的な街並みが存在する一画がある。
街並みの主体は近江商人の屋敷街。 旧近江八幡警察署の建物を改装した郷土資料館を起点に、国重要文化財の旧西川家住宅などが並ぶ。八幡堀が水郷らしさを感じさせる。柳の長い枝葉が水路にかぶさる。風が止まり、水面は大理石の床のように波一つなく静まりながら光る。
白雲橋を渡ると八幡神社の入り口になる。 市の名前の由来である。境内の背後に八幡山があり、ロープウェーで山頂に登ると八幡城跡がある。
白雲橋の前を神社と反対方向に戻ると、白雲館がある。八幡東小学校として建造された擬洋風建築で、現在は観光案内所として機能を果たしている。
近江八幡ゆかりのウィリアム・メレル・ヴォーリズの史跡も近隣に残されている。旧居宅がヴォーリズ記念館になり、設立した近江兄弟社が企業として、近江兄弟社学園高校が学校として市内に存在する。ヴォーリズは建築、医療、教育、社会事業と幅広く地域貢献している。滋賀県には他にもヴォーリズ設計の学校が残っている。 なお、私が仕事先で偶然見つけた赤レンガの教会・日本基督教団大阪教会もヴォーリズの設計だった。
近江商人の「三方良し」、ヴォーリズの社会貢献、そして私の仕事にもつながる「経営理念」。そのありようをつきつめれば共通したものを感じる。時代を問わず、立場を問わず、共通する判断基準があるとすれば、それを普遍の真理と呼んでもいいのではないか。
人は金銭ごときのために生きるのだろうか。生活手段として必要ではあっても、それが目的であるはずはない。太古より集団生活をしてきた人類のDNAには、「集団の中で人の役に立つ」ことを目的として生きてきた記憶が刷り込まれているはず。それは近江商人の表現や、ヴォーリズの功績にも通じよう。現代を生きるわれわれの中にも、理念となって脈々と受け継がれていることを信じたい。
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近江八幡 郷土資料館 |
新町の街並み |
屋敷の門から邸内に続く道 |
土蔵 |
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八幡堀にかかる白雲橋 |
静まり返る八幡堀 |
白雲館 |
かわらミュージアム |
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